【管理栄養士が解説】ニュークックチルとは?メリット・デメリットと管理栄養士の本音

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・ニュークックチルってなに?
・メリット・デメリットを知りたい

こういった疑問はありませんか?

ここ最近、給食業界は人手不足でニュークックチルの導入が急速的に増えてきました。しかし、まだまだ情報が少ないのが現状だと思います。

まりすけ

私は、病院側と委託給食側で11年以上ニュークックチルについて携わってきました。

ニュークックチルは、素晴らしいシステムですが、まだまだ課題が多いです。

そこでこの記事では、実際にニュークックチルに携わってきた管理栄養士が考えるニュークックチルのメリット・デメリットについてご紹介します。

この記事を読めば、企業説明からでは見えないニュークックチルの良い所・悪い所を知ることができます。

ニュークックチルの本当のところを知りたい方、ぜひ最後までご覧ください。

ここで紹介する内容は、病院給食のクックチルを前提にしています。

目次

ニュークックチルとは?

ニュークックチルは、調理した食品を急速に冷却し、冷蔵状態で盛り付け食器ごと再加熱して提供する調理法のことです。

この方法は、食材の鮮度や風味を保ちながら、食中毒のリスクを減らすことができます。そのため、調理後5日間にわたって料理を安全に保存することが可能です。

具体的な流れは次の通りです。

  • 調理
  • 急速冷却(加熱後90分以内に3℃以下)
  • 冷蔵状態(0~3℃)で保存
  • 盛り付け
  • トレイメイク
  • 再加熱
  • 食事の提供

※⑤と⑥は入れ替わる場合があります。

⑤でトレイメイクされた料理は再加熱カートに入れられ、カートごと病院や施設に運ばれます

運ばれたカートは、施設側に設置された再加熱機械に接続されます。接続後、再加熱カートは一時的に冷蔵状態に保たれ、その後、提供時刻に合わせて⑥再加熱が始まり、料理が温められます。

冷蔵状態で盛り付けを行っているので、再加熱後にすぐに喫食することができます。

再加熱カートとは、トレイにセット済みの食事をカート内で一時保存し、配膳時間に合わせて自動再加熱するシステムのカートのことです。温食と冷食を区分けして管理できるため、温かいものは温かく、冷たいものは冷たく提供することができます。

熱風式、加熱蒸気式、マイクロ波、熱伝導式、などさまざまなタイプの再加熱カートがあります。

管理栄養士の考えるニュークックチルのメリット

病院や施設などでニュークックチルを導入するメリットをあげてみました。

ちなみに、私は急性期病院と回復期病院の2つのニュークックチル導入病院で勤務経験があります。

  • 温かい料理が提供できる
  • 衛生的で安全
  • 給食管理がほぼ発生しない
  • 残飯などが発生しない
  • コストが削減できる

温かい料理が提供できる

ニュークックチルでは、温かい料理を提供できるのが大きな特徴です。

その理由は、料理を食器に盛りつけたまま再加熱できるためです。

クックサーブやクックチルでは、盛り付け・トレイメイクの際に温度が下がってしまいまが、ニュークックチルでは、盛り付けとトレイメイクが完了したものを再加熱するため、温めた後すぐに提供できます。

まりすけ

実際に、病院で患者さんから「ここの食事は温かくていいわ。他の病院は冷めている。」とお声をいただいたことがあります。


衛生的で安全

ニュークックチルは、衛生的で安全な食事を提供することができます。

調理過程で人の手が介入するほど、菌の混入リスクが高まりますが、ニュークックチルでは再加熱後に人の手が介入せずに患者さんに食事が提供されるため、料理を温めた後の菌の混入リスクが低くなります

その結果、再加熱後に盛り付けを行うクックチルと比較しても、ニュークックチルの方がより衛生的であると言えるます。

給食管理がほぼ発生しない

ニュークックチルを導入すると、病院側は給食管理がほぼ発生しません

もちろん最低限の管理は必要ですが、献立作成、食材発注、調理業務などは必要なくなります。

私が勤めていた回復期病院では、たまに新規入院の対応はありましたが、その他は食事の搬入時に立ち会う程度でした。

ただし、急性期病院の場合は食事の変更が多数発生するので、その対応が必要になります。

ニュークックチルは回復期慢性期病院の方が向いています。



残飯などが発生しない

ニュークックチルを導入すると、残飯が発生しなくなります

食べ終わった食事はそのままの状態で返却できるためです。

実際に残飯が出ないことで、病院にゴキブリが出にくくなったと、病院長も喜んでいました。

コストが削減できる

ニュークックチルを導入することで、調理が不要になり、その分の人件費・経費を削減できます。

実際、私が勤めていた回復期病院では、栄養課のスタッフはわずか2人だけでした(厨房0人)。


管理栄養士の考えるニュークックチルのデメリット

私が実際に働いて感じたニュークックチルデメリットは次の通り。

  • 料理の制限がある
  • 時間経過により離水する
  • 食器の制限がある
  • 病院側の要望が通りにくい
  • 食数変更が発生する
  • トラブル対応が複雑

それぞれ解説します。

料理の制限がある

ニュークックチルでは向いていない料理できない料理があります。

丼ぶりご飯が水分を吸ってしまうため丼ぶりはできず、別皿での提供になる。(例:かつ丼⇨ご飯 + カツ煮)
麺類時間経過で麺が伸びてしまう。またパスタは乾燥しやすく、私の勤めていた会社では提供できなかった。
揚げ物サクサク感がなくなり、衣がシナシナになってしまう。
生野菜加熱工程がなく殺菌工程がないため食中毒リスクが高く提供しないことが多い
マヨ和え・ドレッシング和え和え物にすると離水をしてしまうので、小袋などでの提供となる。
ワサビ・辛子和えワサビや辛子の辛さが時間経過で飛んでしまう
まりすけ

提供しますが、指摘を受けることも多いです。


時間経過により離水する

ニュークックチルは、離水しやすい特性があります。

これは、調理から提供までの時間がかかるため、食材から水分が離れてしまうことが原因です。その結果、料理の味が薄くなったり、食器の中に水分がたまってしまうことがあります。

特に、葉物豆腐などの食材では、離水が顕著に見られます。

実際に、冷奴などでは、食べる際に豆腐が水に浮かんでいることもありました。盛り付け時にしっかり水を切っていても、時間が経つとどうしても水分が出てしまうのです。

まりすけ

嚥下対応食も離水の注意が必要です。


食器の制限がある

ニュークックチルでは、使用できる食器に制限があります。

まず、熱に強く、衝撃に耐えられる食器である必要があります。これは、再加熱工程があることと、調理工場から病院などへ配送される際に、トラックで運搬されることが影響しています。

一般的な食器では、再加熱時に熱くなりすぎたり、変色してしまうことがあります。また、運搬中のトラックの揺れで食器同士がぶつかり、破損するリスクもあります。このため、熱や衝撃に強い食器が求められます。

さらに、食器の高さも重要です。再加熱カートは、一度に多くの食事を配送できるように、段ごとの高さができるだけ低く設計されています。そのため、食器の高さが再加熱カートの段に合わないと使用できません。この高さの制限が意外と厄介で、結果的に使用できる食器が限られてしまいます。

使用できる食器に制限があると、料理にも影響が出ます。たとえば、献立が250gの料理なのに、食器が小さく200gしか入らない場合、メニューに制約が生じます。

まりすけ

私が献立を考えていたときも、麺のメニューで量を増やしたくても、器に入りきらずに増やせないという状況がありました。

このように、食器の制限があるため、例えば行事食だけ見た目の良い食器を使うなどの変化が付けられません。

食器にこだわる方にとってはこの制限がニュークックチルのデメリットと言えます。



病院側の要望が通りにくい

ニュークックチルのデメリットの一つは、病院側の要望が通りにくいことです。

これは、外部の委託給食会社を利用する場合に特に当てはまります。

委託給食会社は、1つの病院だけでなく、何十から数百の病院や施設に食事を提供しているため、特定の施設からの要望に偏って意見を取り入れることが難しくなります

そのため、例えば特定の食種のリクエストについても、希望する食種を作ってもらうのは難しく、既存の食種しか利用できないことが多いです。

実際、料理の好みについては、A病院では不評でもB病院では好評ということがよくあります。このため、改善の要望に迅速に対応できない現実があります。

このように、自施設内に委託給食会社が常駐していた頃のように要望が通りにくくなるのが、ニュークックチル導入の大きなデメリットと言えます。

食数変更が発生する

ニュークックチルには、食事提供前に食数変更が発生するというデメリットがあります。

これは、外部施設から食事が運ばれてくるため、食事の発注締め切りが設定されているために起こる現象です。

たとえば、今日の昼食の締め切りが前日の14時である場合、締め切り後に変更があった場合は、病院側でその分の食事を用意しなければなりません。

新規の食事の準備、食種の変更欠食の対応などが発生し、これらの処理が非常に複雑になります。

こういった変更が多い急性期病院などは、ニュークックチルにはあまり向いていないと言えます。

一方で、慢性期病院では緊急の食事変更が少ないため、特に変更作業がなくスムーズに食事を提供できます。このため、ニュークックチルのメリットを最大限に活かすことが可能です。

まりすけ

新規で必要な食事は、あらかじめ注文していた予備食を使用したり、別途用意した長期保存可能なストック食を利用することが多いです。



トラブル対応が複雑

ニュークックチルでは、トラブル対応が複雑になることが多く、これが最大のデメリットだと思っています。

具体的には、食事の搬入ができない場合や、食事を破棄しなければならない事態が発生することです。予期しない災害や事故によって、食事の搬入ができなくなることもあります。また、届いた食事が再加熱カートの故障やスイッチの入れ忘れによって使用できなくなることもあります。

私自身、こういったトラブルを何度も経験しました。めったにありませんが、再加熱カートの機械の故障スイッチの入れ忘れなどは実際にあります。

再加熱カートは、病院側に設置された機械に接続することで、庫内の食事を冷蔵状態に保つことができますが、この冷蔵状態が維持されずに食事が10℃を超えると、食中毒のリスクがあるため、食事は廃棄しなければなりません。(参照:【資料】サテライトキッチンにおけるHACCPの考え方を取り入れた衛生管理の手引書|厚生労働省

このような事態になると、提供する食事がなくなり、大変な状況になります。

ニュークックチルを導入している病院では、厨房がまったくない場合や、調理環境が人員や設備的に整っていないことが多く、調理ができないことも多いです。そのため、こうしたトラブルへの対応が非常に難しくなります。

対処方法としては、調理工場から別の食事を再配送してもらったり、長期保存可能なストック食を利用して食事を提供することが一般的です。しかし、予定していた食事の提供ができなくなるため、アレルギー対応や提供の段取りなどで混乱が生じることも多いです。

まりすけ

こういったトラブルが発生するのは、年に1回もないかもしれません。しかし、だからこそ起こったときに混乱してしまうことも多いです。


実際にニュークックチルってどうなの?

私は、病院側でも、委託給食側でもニュークックチルを経験してきました。

経験してきて言えるのは、ニュークックチルは素晴らしいシステムです!

病院側からみたニュークックチル

ニュークックチルを導入することで、管理栄養士は病棟業務に集中できるようになり、病院側にとってそのメリットは非常に大きいと感じました。

実際、私が病院にいた際は、給食管理業務は主に書類の確認や検食くらいでした。

しかし、急性期病院と回復期病院の両方でニュークックチルを経験しましたが、急性期病院では食事の変更が多く、あまり向いていないと感じました。

一方、回復期病院では急性期ほどの緊急性がなく、食事変更は締め切りに合わせて行ってもらうようにしていたため、ニュークックチルのメリットを最大限に活かすことができていました。

まりすけ

メリットとデメリットをしっかり理解した上で導入すれば、ニュークックチルは病院にとって素晴らしい給食システムとなると言えます!



委託給食側からみたニュークックチル

ニュークックチルは通常の給食業務よりも複雑なことも多いですが、勤務時間が規則的になったり、業務分担が明確になったり、委託側にとってもメリットは多かったです。

まだニュークックチルを扱っている会社は少ないため、情報が少なく苦労することも多いですが、伸びしろがあり、将来性を秘めいている給食システムだと思います。

まりすけ

私、ニュークックチル大好きなんですよね(笑)

管理栄養士さんにはぜひニュークックチルの委託給食会社の魅力を知ってほしいので、興味があればこちらの記事も読んでみてくさい。⇨管理栄養士の転職先で病院給食のセントラルキッチンがおすすめな5つの理由

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まとめ:ニュークックチルはメリット・デメリット両方あるけど素晴らしいシステム

この記事では、企業説明からでは見えないニュークックチルの良い所・悪い所について解説しました。

要点をまとめると以下の通り。

ニュークックチルのメリット

  • 温かい料理が提供できる
  • 衛生的で安全
  • 給食管理がほぼ発生しない
  • 残飯などが発生しない
  • コストが削減できる

ニュークックチルのデメリット

  • 料理の制限がある
  • 時間経過により離水する
  • 食器の制限がある
  • 病院側の要望が通りにくい
  • 食数変更が発生する
  • トラブル対応が複雑

実はニュークックチルはメリットもデメリットも両方多いです。

とくに企業からの説明ではあまりデメリットは語られにくいので、参考になればうれしいです。

まりすけ

管理栄養士としてデメリットを知っているうえでも、ニュークックチルはいいシステムだと思っています。


クックチルについても☟こちらの記事で解説しています。

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