【管理栄養士が解説】クックチルとは?メリット・デメリットと管理栄養士の本音

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・クックチルってなに?
・メリット・デメリットを知りたい

こういった疑問はありませんか?

ここ最近、給食業界は人手不足でクックチルの導入が急速的に増えてきました。しかし、まだまだ情報が少ないのが現状だと思います。

まりすけ

私は、ニュークックチル導入の病院に3年セントラルキッチンに8年勤務経験(病院給食)のある管理栄養士です。11年以上クックチルについて携わってきました。

クックチルは、素晴らしいシステムですが、まだまだ課題が多いです。

そこでこの記事では、実際にクックチルに携わってきた管理栄養士が考えるクックチルのメリット・デメリットについてご紹介します。

この記事を読めば、企業説明からでは見えないクックチルの良い所・悪い所を知ることができます。

クックチルの本当のところを知りたい方、ぜひ最後までご覧ください。

ここで紹介する内容は、病院給食のクックチルを前提にしています。

目次

クックチルとは?

クックチルは、調理した食品を急速に冷却し、その後再加熱して提供する調理法のことです。

この方法は、食材の鮮度や風味を保ちながら、食中毒のリスクを減らすことができます。そのため、調理後5日間にわたって料理を安全に保存することが可能です。(参照:【添付資料⑤】|HACCP関連情報データベース

具体的な流れは次の通りです。

  • 調理
  • 急速冷却(加熱後90分以内に3℃以下)
  • 冷蔵保存(0~3℃)
  • 再加熱
  • 盛り付け・トレイメイク
  • 喫食

これにより、食事の準備が効率的になり、余分な廃棄物も減らせます。

特に大規模な食事提供を行うレストランや学校、病院などでよく使われています。


管理栄養士の考えるクックチルのメリット

実際に私がクックチルに携わって感じたクックチルメリットをあげてみました。

自社厨房でクックチルを多なう場合と、外部のクックチル食品を導入する場合があると思いますが、どちらにも共通する内容です。

  • 調理後5日間の保存が可能
  • 人手不足の解消
  • 勤務時間の安定
  • 料理に味がしみこむ
  • コスト削減になる

それぞれ解説します。

調理後5日間の保存が可能

クックチルを活用すると、調理後5日間にわたって料理を安全に保存できます

これは大きなメリットですよね。

家庭では、今日作った料理を翌日食べることは一般的ですが、給食の場合は食中毒のリスクがあるため、そうした保存方法は通常できません。給食では、調理後2時間以内に食べることが原則です。

しかし、クックチルを利用することで、適切な条件を設けつつ、料理を安全に5日間保管できるようになります。これにより、作り置きが可能となり、効率的な食事提供が可能となります。

人手不足の解消

クックチルを活用することで、人手不足の解消につながります

最近、給食業界では人手不足が深刻化しており、調理員を確保できない厨房も多く見受けられます。

クックチルを導入すれば、作り置きが可能になり、人手のある時に料理を作っておいて、必要なときに温めて提供できます。

また、外部からクックチル食品を調達することで、厨房での調理員の必要性を大幅に減らすことも可能です。このように、クックチルは人手不足に対する有効な解決策となります。

勤務時間の安定

クックチルの導入により、勤務時間が安定することは大きなメリットです。

従来の給食現場では、調理後2時間以内に食事を提供する必要があり、朝・昼・夕の3回の食事に合わせて調理を行うため、勤務時間が不規則になりがちです。(参照:大量調理施設衛生管理マニュアル|厚生労働省

しかし、クックチルを利用すれば、提供時間に合わせた調理が不要になるため、早出や遅出などの従業員にとって負担の大きい勤務形態が減少します。

特に早朝5時などの出勤は求人が集まりにくいですよね。クックチルの導入によって勤務時間が安定するため、より人材が集まりやすくなる可能性があります。クックチルは働きやすい環境づくりにも寄与します。

まりすけ

私は朝が苦手です。給食会社なのに勤務時間が9時~18時で固定なのは、めちゃくちゃ良かったです。生活リズムも崩れません♪


料理に味がしみこむ

クックチルの大きな利点のひとつは、調理後から提供までに時間があるため、料理に味がしみこみやすい点です。

通常の給食では、調理後2時間以内に提供しなければならないため、味が十分に浸透しにくいという制約があります。

一方、クックチルを利用すれば、調理した料理を冷却して保存し、提供する際に再加熱することができます。このプロセスによって、時間をかけてじっくりと味が染み込み、より深い風味が楽しめる料理が実現します。

特に煮物やカレーなど、時間をかけることで美味しさが増す料理においては、その効果が表れやすいです。

コスト削減になる

クックチル食品を導入する施設では、コスト削減が期待できる可能性があります。

通常、調理を行うと廃棄物が出たり、在庫管理に手間がかかることがあります。また調理員の確保や調理における水道光熱費も必要になります。

しかし、クックチル商品を利用することで、食材費・人件費・経費などのコストを大幅に削減することが可能です。

 

 

管理栄養士の考えるクックチルのデメリット

実際に現場で働いていたからこそ分かる、クックチルのデメリットをあげました。おそらく、企業の説明では聞けない内容だと思います。

  • 時間経過により離水する
  • 料理に制限ができる
  • 彩りが良くない
  • 盛り付け時に料理が冷める
  • 衛生管理が重要


時間経過により離水する

クックチルには離水しやすい特性があります。

これは、調理から提供までの時間がかかるため、その間に食材から水分が離れてしまうことが原因です。その結果、料理の味が薄くなってしまうことがよくありました。

特に、葉物豆腐のような食材では、離水が顕著に見られます。

また、特に注意が必要なのが嚥下対応食です。ムース食やゼリー食のように、嚥下機能が低下している方が食べる食事では、離水した水分によりむせてしまうことがあるため、細心の注意が求められます。

まりすけ

実際に私がクックチルに携わっていた際、こうした指摘は多くありました。



料理に制限ができる

クックチルには、その特性により提供できない料理向いていないメニューがあります。

私が経験した中で、思い浮かぶ料理・食材をあげました。

生野菜会社にもよりますが、生野菜は使用しないことが多いです。なぜかというと、生野菜は加熱処理が行われないため、菌を殺す機会がなく、食中毒のリスクが高まるからです。生野菜が使えないと、彩りに欠けたり、サラダが提供できず、利用者から残念がられることも少なくありません。
麺類麺類は時間が経つと伸びてしまい残念がられることも多いです。
揚げ物揚げ物は時間がたつとサクサク感が失われ、再加熱後の喫食時には衣がシナシナになってしまうことが多いです。
マヨネーズ・ドレッシング副菜でのマヨネーズ和えやドレッシング和えは離水してしまいます。調理時ではなく、提供前の盛り付け時に和えるなどの対応が望ましいです。
わさび・からしワサビ和えや辛し和えは、喫食前になると辛味が飛んでしまい、ワサビの風味がほとんど感じられなくなることがあります。
まりすけ

食品メーカーからは離水防止の粉などの製品が提供されており、こうした商品を活用することで改善を図ることも可能です。



彩りが良くない

クックチルでは、料理の彩りが良くないことが多いのが一つの課題です。

その理由は、調理時と再加熱時で加熱が2回行われるため、火が入りすぎてしまい、野菜の色が失われてしまうためです。

特に、緑色の野菜が茶色がかった緑になってしまうと、見た目の美味しさが損なわれてしまいます。

盛り付け時に料理が冷める

クックチルは食事提供時には料理が冷めていることが多いです。

なぜかというと再加熱後に盛り付けをするため、その間に冷めてしまうからです。

ニュークックチルであれば、盛り付け後に再加熱されるため、温かい料理が提供されます。ニュークックチルについて知りたい方はこちらの記事⇨

衛生管理がシビア

自社厨房でクックチルを多なう場合には衛生管理がシビアになります。

その理由は、通常の給食管理よりも衛生管理をする項目が増えるからです。

例えば、大量調理施設衛生管理マニュアルには「調理後の食品の温度管理に係る記録の取り方」が示されていますが、通常の給食では発生しないタイミングや回数で温度確認と記録が必要になります。

衛生管理ポイントが増えることは、それだけリスクも高まることを意味します。このため、衛生管理の重要性を十分に理解した上で、しっかりとした管理を行う必要がクックチルにはあります。

まりすけ

外部のクックチル食品を使用する場合は、衛生管理の負担は少ないです。


クックチルは美味しくない?

クックチルはまずい」とよく耳にします。実際にクックチルの運用に携わってきた管理栄養士としては、悔しいですが、その意見を完全に否定することは難しいと感じています。ただし、改善の余地は十分にあると思います。

クックチルは、クックサーブよりも食材の質に大きく影響される印象があります。

私は2社クックチルの委託給食での経験がありますが、1社目と2社目では味が全く異なりました。

1社目では、肉は国産、野菜は新鮮な生野菜を使用するなど、食材の質に非常にこだわっていました。その結果、料理はとても美味しく、検食の際には思わず食べ過ぎてしまうほどでした。

一方、2社目は食材費を削減することに重きを置き、肉は外国産、野菜はほとんど冷凍を使用していました。そのため、食感や食材本来の味が損なわれ、検食の際にはあまり食欲が湧かず、味も満足できるものではありませんでした。

クックチルでは、調理後から喫食までの時間があるため、食材の質がより一層、料理に影響を与えると感じています。そのため良質な食材を使用することで、クックチルでも美味しい料理を提供できる可能性があります。

しかし、給食業界は価格競争が激しく、安さで競争せざるを得ない現状があります。その結果、食材費を削ることに集中し、品質が低下した給食が多くなっているのが実情です。

価格重視にならず、質で競争できる給食業界になれば、より美味しい食事の提供が実現できるのでは?と感じています。

まりすけ

委託給食会社で働いていましたが、給食単価を下げるように要求される一方で、美味しい料理を提供するよう求められることが多く、非常に難しさを感じました。


まとめ:クックチルは将来性のあるシステム

この記事では、実際にクックチルに携わってきた管理栄養士が考えるクックチルのメリット・デメリットについてご紹介しました。

要点をまとめると以下の通り。

クックチルのメリット

  • 調理後5日間の保存が可能
  • 人材不足の解消
  • 勤務時間の安定
  • 料理に味がしみこむ
  • コスト削減になる

クックチルのデメリット

  • 時間経過により離水する
  • 料理に制限ができる
  • 彩りが良くない
  • 盛り付け時に料理が冷める
  • 衛生管理がシビア

クックチルはデメリットも多いですが、将来性のあるシステムです。

企業の説明では見えない現場の本音をご紹介しました。何かのお役に立てればうれしいです。

クックチルにさらに改良を加えたニュークックチルについても☟こちらの記事で解説しています。興味がある方はご覧ください。

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