クックチルとニュークックチルの違い!管理栄養士が解説【メリット・デメリット】

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クックチルニュークックチルってなに?
・2つの違いは?

こういった疑問をお持ちではありませんか?

ここ最近、給食業界でクックチルを導入する企業や施設が増えてきました。しかし、まだまだ情報が少ないのが現状です。

特に経験者の生の声はあまり出てこないのではないでしょうか?

企業側の説明だけでは、良い面ばかりが強調され、実態が見えにくいことも多いですよね。

まりすけ

私はニュークックチル導入の病院に3年ニュークックチル運用のセントラルキッチンに8年の勤務経験がある管理栄養士です。
病院側・運営側の両方を経験してきました。


そこでこの記事では、以下の内容についてご紹介していきます。

  • クックチル・ニュークックチルについての解説
  • 2つを比較したときのメリット・デメリット

ここでのクックチル・ニュークックチルは、病院給食や福祉施設の食事に特化したものを前提とします。


この記事を読めば、病院給食のクックチル・ニュークックチルとその違いについて知ることが出来ます。
クックチルを理解し実務に繋げていきたい方は、ぜひ最後までみてください。

目次

クックチルとは?

クックチルとは、調理した食品をすぐに急速に冷やして保存し、必要なときに再加熱して提供する調理方法です。

調理後すぐに食品を90分以内に3℃以下まで急速冷却します。
その後、食品は冷蔵保存(0~3℃)し、提供前に再加熱します。

適切に冷却・保存された食品は、通常5日間保存可能です(最初に加熱をした日から提供する日を含めて5日間)。

クックチル

  • 通常通りの調理
  • 加熱後90分以内に3℃以下まで急速冷却
  • 冷蔵状態(0~3℃)で保存
  • 再加熱
  • 盛り付け・トレイメイク
  • 食事の提供

なぜ3℃以下に冷却するかというと、食中毒菌の繁殖を抑えるためです。10℃~60℃は「危険温度帯」と呼ばれ、食中毒菌が増殖しやすい温度です。調理済の料理を長期間保存するためにはこの温度帯を避けるために急速冷却します。(参照:食品衛生管理の手引き|厚生労働省

まりすけ

調理した料理を1度冷やすのがポイント!冷やすから長期保存ができます。


クックチルのメリット・デメリットを詳しく知りたい方はこちら☟で確認できます。

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ニュークックチルとは?

ニュークックチルは、基本的な仕組みはクックチルと同じです。料理を調理・冷却するところまではクックチル同様。

異なるところは、料理を冷蔵状態で盛り付け食器ごと再加熱するところです。

ニュークックチル

  • 通常通りの調理
  • 加熱後90分以内に3℃以下まで急速冷却
  • 冷蔵状態(0~3℃)で保存
  • 盛り付け
  • トレイメイク
  • 再加熱
  • 食事の提供

※⑤と⑥は入れ替わる場合があります

まりすけ

冷却した料理を盛りつけする工程がポイント!

クックチルのメリット・デメリットを詳しく知りたい方はこちら☟で確認できます。

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セントラルキッチンとは?

クックチル・ニュークックチルは施設内で完結するものもありますが、セントラルキッチンで大量調理されることが多いです。そのため、合わせてセントラルキッチンについても触れておきます。

ここでは病院給食をメインとして取り扱うセントラルキッチンとして説明します。

セントラルキッチンは、一言で言うと、大きいキッチンです。
複数の病院や福祉施設に提供する患者食を、1ヵ所でまとめて大量調理する施設のことです。


セントラルキッチンで患者食の下処理調理盛り付けトレイメイク(施設で行うこともあり)、食器の洗浄を請け負います。


調理した食事は、チルド状態(0~3℃)で病院へ運ばれ、喫食前に再加熱して患者様に提供されます。

クックチル・ニュークックチルの調理を行っている拠点がセントラルキッチンとなります。

クックチルとニュークックチルの違い

「クックチル」と「ニュークックチル」の違いが分かりにくいと思うので、ポイントを図にしてみました。

一言でいうと、盛り付けのタイミングが異なります。

クックチルでは再加熱後に盛り付けを行いまが、
ニュークックチルは、盛り付けを再加熱の前に行います。

これだけ聞くと、あまり変わらないようにも聞こえますが、この一工程によって運用方法などがかなり変わってきます。


クックチルの場合、再加熱後から食事提供までの作業が多数発生(盛り付け・トレイメイク)します。一方、ニュークックチルは再加熱後すぐに提供できるため、病院側の作業負担が軽減されます。

まりすけ

クックチル or ニュークックチルを検討している病院側は、どちらを導入するかによって施設内厨房での作業量が大きく変わってきます。


クックチルとニュークックチルの工程別の違い


クックチルとニュークックチルの違いについて、もう少し詳しく工程ごとに説明していきます。

ちなみに・・・クックチル、ニュークックチルも細かくみると、いろいろな方法があります。そのため、ここでは以下の方法を前提とした違いを説明します。

  • クックチル・・・バルク方式(食品が盛付前の状態で、ステンレス鋼製ホテルパンで配送する方法)
  • ニュークックチル・・・再加熱カートを使用する方法


2つの違いを表に表すと☟以下の内容になります。

2つの違いクックチルニュークックチル
搬入方法ホテルパン用のカートや専用コンテナ再加熱カート
保管方法冷蔵庫再加熱カート
再加熱方法スチコン等再加熱カート
加熱後の作業盛付・トレイメイク・カート入れ最終確認
食器洗浄食器・トレイ・カートの洗浄なし
発注方法食種単位個人単位

それぞれ解説します。

搬入方法の違い

まず、クックチルとニュークックチルでは、搬入方法が異なります。

ここで言う「搬入方法」とは、セントラルキッチンからサテライトキッチンへの搬入方法のことです。

クックチルは、食事をホテルパンに入れるので、ホテルパン用のカート専用コンテナで搬入されます。一方、ニュークックチルは再加熱カートを使用して搬入されます。

サテライトキッチンとは、セントラルキッチンから食事の提供を受けて最終的な配膳を行う施設のことです。


保管方法の違い

クックチルとニュークックチルでは、届けられた後の保管方法が異なります。

クックチルでは、配送に使用されるカートやコンテナに冷蔵機能が備わっていないことが多いため、キッチン内の冷蔵庫で保管します。この際、1食以上の患者さん分をまとめて保管する必要があるため、冷蔵庫のスペースは人数分確保する必要があります。

例えば、100人分の夕食の場合、主菜100食分副菜100食分(×2品)保管スペースが必要です。



一方、ニュークックチルでは、再加熱カートを電源につなぐと冷蔵機能が働くため、冷蔵庫は必要なく、カートを電源に接続したまま保管できます。

まりすけ

クックチルは2~3食分まとめて配送する場合もあります。その場合は、100人×2~3食分の冷蔵庫スペースの確保が必要になります。


再加熱方法の違い

クックチルとニュークックチルでは、再加熱方法が異なります。

クックチルでは、冷蔵庫で保管されている料理のうち、温めて提供する必要があるものを、喫食前に冷蔵庫から取り出して温めます。温める方法としては、スチームコンベクションオーブン、リヒートウォーマー、電子レンジ、または鍋を使った湯煎などが使用されます。

一方、ニュークックチルでは、再加熱カートが自動的に喫食時間に合わせて加熱を行います。

まりすけ

ニュークックチルは事前に加熱予約をしているため、作業は発生しません。


加熱後の作業の違い

クックチルとニュークックチルでは、加熱後の作業が異なります。

クックチルは温めた後、以下の工程が発生します。

  • 器に盛りつける
  • トレイに配膳する
  • 配膳用カートに入れる

ニュークックチルは、発生する作業は最終確認くらいで、そのまま提供できます。

まりすけ

クックチルは盛り付けやトレイメイク工程で料理が冷めてしまうことが多いですが、ニュークックチルは温かいまま料理を提供できます。


食器洗浄の違い

クックチルとニュークックチルでは、食器の洗浄方法にも違いがあります。

クックチルでは、サテライトキッチンの食器を使用するため、患者さんの喫食後に食器、トレイ、配膳カートの洗浄が必要です。

一方、ニュークックチルでは、セントラルキッチンの食器、トレイ、カートを使用するため、患者さんが喫食後はそのまま返却し、洗浄はセントラルキッチンで行われます。

まりすけ

ただし、ニュークックチルでは、患者さんの残食状況を確認しにくくなるというデメリットがあります。


発注方法の違い

クックチルとニュークックチルでは、発注方法にも違いがあります。

クックチルでは、複数人分の食事がまとめて届くため、発注は食種単位で行うことが一般的です。

 例:常食90食、軟菜食10食



一方、ニュークックチルでは、患者さん一人ひとりの食事がトレイにセットされて届くため、各患者さんの食事情報を確認し、個別に発注する必要があります。

 例:「佐藤 太郎様、常食、ご飯200g」「鈴木 花子様、軟菜食、全粥300g、卵アレルギー」など。

まりすけ

ニュークックチルでは個人情報の取扱いに注意が必要になります。


クックチルとニュークックチルのメリット・デメリット

クックチルとニュークックチルの違いを踏まえ、それぞれのメリット・デメリットについて比較して解説します。

クックチルニュークックチル
料理の温かさ冷める可能性がある温かく提供できる
再加熱の影響あるある
離水の影響盛り付け時に対処できる対処難しい
料理のバリエーション一部制限が多い制限が多い
食器の種類制限なし専用食器のみ
衛生面盛り付け工程でリスクありリスクかなり低い
残食の廃棄廃棄の必要あり廃棄の必要なし
残食の確認確認しやすい把握しにくい
提供前の作業盛付・トレイメイクにバタつく最終確認のみ
冷蔵庫の必要性人数分のスペース必要なし
機械のスペース再加熱機械のみ再加熱カートの台数分の設置場所が必要
機械トラブルのリスク少ない大きい
個人情報の取扱い必要なし必要
人件費の削減一部削減できるかなり削減できる

それぞれ解説します。

料理の温かさ

クックチルとニュークックチルでは、提供時の料理の温かさに違いがあり、ニュークックチルの方が温かい食事の提供が可能です。ニュークックチルでは、再加熱後に最終確認を行い、そのまま提供できるため、再加熱から提供までの時間が短縮されます。これにより、料理が温かい状態で患者さんに提供されることが可能となります。

一方、クックチルでは、再加熱後に盛付けトレイメイクカートへの収納などの作業が必要なため、その間に料理が冷めてしまう可能性が高くなります。

再加熱の影響

クックチルとニュークックチルでは、どちらも再加熱による影響を受けます。具体的には、再加熱によって食材がぱさぱさになったり、火が入りすぎたりすることがあります。この点については、どちらの方法にも共通する課題であり、両者を比較して優劣をつけにくい点です。

離水の影響

クックチルとニュークックチルでは、どちらも時間経過による離水の影響を受けますが、クックチルの方が離水への対応がしやすいです。その理由は、クックチルには盛り付け工程があるためです。盛り付け時に、離水した水分を切ることが可能です。

一方、ニュークックチルには盛り付け工程がないため、もし離水してしまった場合は、そのままの状態で食事を提供せざるを得ません。

料理のバリエーション

クックチルとニュークックチルでは、料理のバリエーションにも違いがあります。ニュークックチルの方が料理の制限を受けやすいです。ニュークックチルでは、早い段階で盛り付けを行うため、それに伴い提供できる料理に制限が生じます。

例えば、かつ丼の場合、盛り付け時にカツをご飯の上にのせてしまうと、ご飯が汁を吸ってしまい、味が損なわれてしまいます。そのため、ニュークックチルでは、かつ丼の提供が難しく、代わりに「ご飯+カツ煮」という形で提供されることが一般的です。

一方、クックチルでは提供直前に盛り付けを行うため、かつ丼としてそのまま盛り付けて提供することが可能です。

食器の種類

クックチルとニュークックチルでは、使用する食器にも違いがあります。クックチルでは、再加熱後に盛り付けを行うため、食器を自由に選ぶことができます

一方、ニュークックチルでは、食器ごと再加熱を行うため、熱に強い食器を使用しなければいけません。そのため使用できる食器の種類が限られてしまいます。このため、ニュークックチルでは行事食などで特別な食器を使用することなどが難しくなります。

衛生面

クックチルとニュークックチルでは、衛生面にも違いがあります。ニュークックチルの方が衛生面で優れており、その理由は、再加熱後にそのまま提供できるため、菌の混入リスクが低くなるからです。

一方、クックチルでは、再加熱後に盛り付けが行われるため、この工程で菌が混入するリスクが高まります。

残食の廃棄

クックチルとニュークックチルでは、残食の廃棄にも違いがあります。クックチルでは残食の廃棄が発生します。

一方ニュークックチルは残食もそのままカートに入れて返却するので、廃棄が出ません。これは、生ごみによるゴキブリが発生しにくいというメリットがあります。

残食の確認

クックチルとニュークックチルでは、残食の確認のしやすさにも違いがあります。クックチルでは、廃棄を自分のところで行うため、患者さんの喫食状況を残食の量から確認することができます。

しかし、ニュークックチルでは、残食をそのまま返却するため、残食の確認がしづらくなるというデメリットがあります。

提供前の作業

クックチルとニュークックチルでは、食事提供前の作業にも違いがあります。ニュークックチルは、盛り付けやトレイメイクが事前に終了しているため、再加熱後は最終確認のみで提供が可能で、スムーズに食事を提供できます。

一方、クックチルでは、再加熱後に盛り付け、トレイメイク、カートへの収納などの作業が必要なため、提供前の作業が多く、忙しくなります。

冷蔵庫の必要性

クックチルとニュークックチルでは、冷蔵庫の必要性にも違いがあります。クックチルでは、食事が届いてから提供するまでの間に冷蔵保管が必要なため、冷蔵庫のスペースを確保することが必須です。人数分の食事を収納できる十分なスペースが求められます。

一方、ニュークックチルでは、再加熱カートに冷却機能が備わっているものが多いため、カートを電源に接続するだけで冷蔵保管が可能で、大きな冷蔵庫は必要ありません。

機械のスペース

クックチルとニュークックチルでは、機械のスペースの必要性にも違いがあります。ニュークックチルでは、冷蔵庫が不要な代わりに、再加熱カートを接続するための電源機能を持つ機械を事前に設置しておく必要性があります。この機械は、種類によっては大きなスペースを占めることがあります。

機械トラブルのリスク

クックチルとニュークックチルでは、機械トラブルのリスクにも違いがあります。ニュークックチルでは、再加熱カート機械の電源を入れ忘れると、食事が使用できなくなるリスクがあります。電源の入れ忘れがあると、冷蔵状態にならないためカート内の温度が上昇し、食事の温度も上がってしまいます。その結果、食中毒菌が増殖し、食事の中心温度が10℃を超えると廃棄となります。電源のスイッチを入れるのは人間が行うため、うっかり忘れてしまうリスクが実際にあります。

一方、クックチルでは、冷蔵庫を使用します。冷蔵庫は常に冷蔵状態を保っていることが基本であり、スイッチの入れ忘れなどはないため、冷却忘れによるリスクはありません。

まりすけ

しかし、どちらも機械や冷蔵庫の故障についてはリスクが存在します。


個人情報の取扱い

クックチルとニュークックチルでは、個人情報の取り扱いにも違いがあります。ニュークックチルでは、個人情報の取り扱いが求められます。これは、ニュークックチルでは一人ひとりの食事をトレイメイクする必要があるためです。

一方、クックチルでは、食事は複数人分をまとめて配送するため、食種情報だけで発注が可能で、個人情報の取り扱いは発生しません。

人件費の削減

クックチルとニュークックチルでは、人件費にも違いがあります。ニュークックチルでは、盛り付けやトレイメイクなどの工程がないため、発生する人件費が少なくなります。カートを病棟に運ぶスタッフが数人いれば十分です。

一方、クックチルでは、盛り付けやトレイメイクが必要なため、食事提供人数に応じて一定の人数を確保する必要があります。

まとめ:どちらにもメリット・デメリットがある

この記事では、クックチルとニュークックチルの違いを解説しました。

要点をまとめると以下の通り。

  • クックチルとは、調理した食品を冷却し、再加熱して提供する
  • ニュークックチルとは、調理した食品を冷却後に盛りつけ食器ごと再加熱して提供する
  • クックチル・ニュークックチルはそれぞれにメリット・デメリットがある

今回クックチル・ニュークックチルについて解説しましたが、色々な方法があるので、運用方法、使用する機械・システムによっては、紹介した内容が当てはまらないこともあることはご了承ください。

私は病院で3年、セントラルキッチンで8年、ニュークックチルに携わってきたので、良い面も悪い面も両方よく見てきました。その上で、良いシステムだと思っています。

どのメリットを優先したいかによって、導入を検討してみてください。


管理栄養士さんには、セントラルキッチンを就職先としておすすめしています。

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